富谷市の文化財

【国登録有形文化財】

「旧佐忠商店（冨谷宿）店舗及び主屋」

土蔵造2階建ての店舗と木造平屋建ての主屋からなる。店舗正面外観は、白漆喰塗(しろしっくいぬり)とナマコ壁の外部上部に黒漆喰塗(くろしっくいぬり)の鉢巻三段を廻(まわ)し、扇垂木(おうぎたるき)風の軒とする。重厚感ある街道景観を形成する。

「旧佐忠商店（冨谷宿）門」

店舗正面東側に建つ門。本柱上に冠木(かぶき)を渡して扉を開き、冠木上の束から腕木(うでき)を出して軒の深い切妻屋根(きりづまやね)を支える。壁は漆喰塗(しっくいぬり)とし、冠木の上には欄間(らんま)を飾る。店舗とともに街道景観を形成する。

富谷(とみや)の田植踊(たうえおどり)

原の田植踊りの発生時期は不明だが、天正20年（1592）正月、伊達政宗公が七ツ森(ななつもり)で催した鹿狩の際にこの踊りを披露し、伊達家の家紋である「竹に雀」のうち「竹」を衣装に用いることが許されたと伝えられている。
歌と笛、太鼓に合わせて早乙女(さおとめ)と弥十郎(やじゅうろう)が踊るもので、昔は正月に家々をまわり踊り歩いた。昭和35年に県無形民俗文化財に指定され、現在は原地区を中心として組織された保存会によって「富谷小学校伝承芸能クラブ」の子どもたちに伝えるなど、後継者の育成に努めている。

銅製経筒(どうせいきょうづつ)

門前城跡の山頂部にある館山経塚(たてやまきょうづか)から寛政9年（1797）に経筒が発見され、以来地区のご神体として石の祠に安置されていた。この経筒は銅製の円筒形で、蓋(ふた)と筒身からなり、高さ22cmである。筒身には埋納の趣旨、永和2年（1376）の年号等が彫刻されている。中世を知る上で貴重な遺物として、昭和50年に宮城県の有形文化財に指定されている。門前城は、仙台藩から江戸幕府へ書き上げた『仙台領古城書上』などの文献や伝承によると、東西四十三間、南北三十六間、城主は二ノ関伊予、天正年中（1573～1592）まで居住とあり、伊達家の家臣二ノ関傳之助の先祖であると伝えられている。

湯船寺(とうせんじ)の彫刻(ちょうこく)

本町第一の巨刹である松澤山湯船寺(しょうたくさんとうせんじ)は、慶長年間に現在吉岡にある中興寺七世の異岸文秀により開山された。初め町上のはずれの湯船沢の地に建立されたが、湯船寺十世心海覚舟和尚の時に現在地に移転した。この寺の本堂の欄間(らんま)には、寺宝の「金龍」と「牡丹に唐獅子」がある。「金龍」の彫刻は文政11年（1828）8月、仙台の北鍛冶町の住人で、下網屋金助こと宝力軒雕龍が彫り上げたものを、富谷新町の梅津屋七兵衛から寄進されたものである。また「牡丹に唐獅子」2面は、檀家の婦人方による寄進である。いずれも市の有形文化財に指定されている。

天津流南部神楽(あまつりゅうなんぶかぐら)（八幡神社(はちまんじんじゃ)）

今泉に伝わる神楽は天津流南部神楽と呼ばれ、大正3年(1914)に南方村(みなみかたむら)（現登米市）の行商人が今泉地区の若者たちに伝えたのが始まりとされている。春に催される八幡神社の祭典などで、五穀豊穣や家内安全などを祈願して奉納されており、市の無形民俗文化財に指定されている。

薬師堂(やくしどう)

薬師如来(やくしにょらい)の坐像(ざぞう)と十二神将(じゅうにしんしょう)他が祀(まつ)られている。勧請年月は不詳だが、安永3年（1774）の『風土記御用書出』に堂宇(どうう)のようすなどが記載されている。薬師如来は瑠璃光如来とも呼ばれており、菩薩(ぼさつ)として修行しながら、衆生(しゅじょう)を救済(きゅうさい)しようと12の大願を立て、現世の利益を説かれたといわれている。薬師如来像・仁王像・十二神将像は市の有形文化財に指定されている。

大清水(おおしみず)の石盥(せっかん)

大清水地内に1960年頃まで、四季を通じて冷たい清水が湧き出していた。昔からこの街道を行き来する人々ののどを潤し心身の疲れをいやし元気づけてくれた冷たい清水であった。伝承によると、新妻豊前(にいづまぶぜん)という武士が病気で倒れた家臣ののどを潤すために、持っていた槍の先（石先）で岩を掘ったところ冷水が湧き出たという。伊達吉村公（伊達政宗の子、忠宗の第4子）がこの地での狩りの途中で、この清水をしばしば利用されたともいわれている。
また、石盥には多くの人馬の利用により汚れていた水場を清潔に保つために平胤久が石盥を設置したことや、享保丁酉（1717）年の年号などが刻まれている。名物であった富谷の茶とともに、大変親しまれていたが、昭和62年、国道4号線の改修工事に伴って従前地より100ｍほど南に移設・復元した。現在は市の有形文化財に指定されている。

榊流永代神楽(さかきりゅうえいだいかぐら)

鹿島天足別神社(かしまあまたりわけじんじゃ)には氏子によって伝えられている神楽がある。この神楽は岩切　（青麻）に伝わる神楽を弘化5年（1848）移入したものである。言葉や歌詞を用いずに、大太鼓、小太鼓、笛の調べにあわせて表現する優雅なもので、現在は12座が伝承されている。市の無形民俗文化財に指定されている。

鹿島天足別神社(かしまあまたりわけじんじゃ) 亀石(かめいし)

この神社は延喜式内社(えんぎしきないしゃ)で、陸奥国百座のうちの一社で、常陸国の鹿島の神である武甕槌命(たけみかづちのみこと)、下総国(しもうさのくに)の香取の神である経津主命(ふつぬしのみこと)を祀っている。この二柱(ふたばしら)の神は武勇をもって知られ、蝦夷征伐に出兵した人々の武運長久や旅の安全、さらに東国から来た兵士や、農民の守護神として尊厳を集め祀られた神社で、勧請年月日は不明である。
この神社の傍らに亀の形に似た大石があり、里人は大亀とよんでいた。大明神の地にあるので、神社名（大亀明神）となり、さらに村名（大亀）となったといわれる。この石は現在では亀石とよばれており、市の史跡に指定されている。

志戸田用水(しとだようすい)ずい道(どう)

昔から米作りが盛んな志戸田は、わずか10坪の田んぼから四斗（よんと、しと）の米が取れたことから、四斗田が志戸田になったと伝えられている。しかし江戸時代には,日照りが続いたり、用水路が洪水で壊されたりと、志戸田の人々は水不足に悩まされていた。1750年ごろの肝入(きもいり)（今の村長）であった千坂半左衛門は、人々の苦しみを見て志戸田の水不足を解消しようと、自分の財産を使って用水路を作り直す工事を始めた。用水路内の崩れやすい所では、ずい道（トンネル）を掘り、ずい道は3ヶ所で600ｍにも及んだ。地面の中を掘り進めるずい道の工事は、道具も十分でなかったこの時代にとても大変な作業であった。中でも3号ずい道では、途中にゴミがつまらないための仕組も考え出された。用水路とずい道の工事は、半左衛門が生きている間では終わらず、息子である半右衛門、孫の清信の三代にわたり、ようやく完成したと伝えられている。

行神社(ゆきじんじゃ)

奈良平安期に、国が奉斎(ほうさい)する神社名を記した神名帳(じんみょうちょう)に登録された神社を「式内社(しきないしゃ)」と呼び、陸奥国に百座、黒川郡には四座が祀(まつ)られているが、行神社はそのうちの一社である。行神社の祭神は猿田彦命(さるたひこのみこと)である。神社名から「行く」の意味で考えると、一種の道祖神、岐神(ふなとのかみ)となり往環(おうかん)の守り神と考えられる。「行き」を靭(ゆき)ととると、軍事の神として祀り、大衡にある須岐神(すきのかみ)を鋤神(すきかみ)ととらえ、農業の神として蝦夷(えみし)経営にあたったとも考えられる。また、大嘗祭(だいじょうさい)の時には東に悠紀殿(ゆきでん)、西に主基殿(すきでん)の2殿が特設されて祭儀(さいぎ)がとり行われるが、富谷の「ゆき」大衡の「すき」はみちのくの朝廷多賀城と結びつけると、何らかの関係が考えられる。

白鳥遺跡(しらとりいせき)

この遺跡は、小高い山に周囲を囲まれた沢部に位置し、平成9年の県道工事に伴って発見された。発掘調査の結果から、縄文時代から奈良時代にかけての複合遺跡であることが分かった。特に奈良時代後半の掘立柱建物跡や柵列跡、土器や木製品等が出土し、中には墨で文字の書かれた器や硯の破片等もみられたことから、当時の役所に関係ある施設の可能性も考えられる。

日吉神社(ひよしじんじゃ)

勧請年月日は不明であるが、安永3年（1774）の『風土記御用書出』によると、承久年中（1219～1222）比叡山(ひえいざん)より勧請した黒川三社の内の一社であるという。また仙台藩の地誌『奥羽観蹟聞老志』によると、弘仁6年（815）に比叡山の行尊(ぎょうそん)が造営したという。
日吉神社の主祭神は大山咋命(おおやまくいのみこと)で、比叡山の地主神として坐していたが、後に最澄(さいちょう)が延暦寺を建立し天台宗を開き、古くからの山岳信仰と結び付いた。やがて神仏習合思想に密着して延暦寺と並び、深く多くの人々の尊信を受けるように　なった。また、最澄が比叡山を山王と称したことから、日吉山王社、山王権現と呼ばれた。日吉神社の鳥居は山王鳥居(さんのうとりい)と呼ばれ、明神鳥居(みょうじんとりい)の上に破風(はふ)型の合掌造(がっしょうづくり)を加え、柱の脇には藁座(わらざ)（根巻）を付けている。